偉人列伝
僕の上司はかなり変わっている人物でして。
人情味に溢れるというか、人間味のある上司なんですがね。
まぁ、天才と何ちゃらは紙一重っつうけれどもまさにそんな感じで、かなりの潔癖症である癖にだらしがないところは異様にだらしがないアンバランスな方なのであります。
洗面所で何回も手を洗いまくるわりにいつもスーツは皺だらけ、みたいな。
その他、結構予想もしない行動をすることで有名なんですが。
今日、一緒に出張に行ってたんですよ。
佐賀と長崎へ。
で、佐賀から長崎への移動の最中、路線が変わって乗り継ぎがあったんですね。
待ち時間は20分くらい。
今さっきまで電車の中でペットボトルのお茶を飲みながらイカの天ぷらを食し。
その電車に乗る前にも昼飯としてカレーを食っていたにも関わらず。
20分しかないのに「なぁガスト行こうや」と駅のすぐ近くに見えたガストへと歩き出したのです。
えー乗り継ぎ20分しかないのにガストでゆっくりして大丈夫なんかいな。
とか思いながら店内へ。
で、入って席につくなり上司はすっくと立ち上がりトイレへと消えていきました。と思いきや2秒くらいで出てきて僕に「(メニューは)後で頼むわ」と一言残して今度は店の外へと消えていきました。
仕方が無いのでとりあえずドリンクバーを頼む僕。
十分経過。
上司、帰ってこず。
鞄を席に置いたままだし。
えー電車乗り遅れちゃうよどうする気だよー。
とか思ってるとやっと上司が戻ってきました。
戻ってきたんですが、見ると何か土産物らしき紙袋を手にしているではありませんか。
えーこの人ガストに誘っておきながら何か自分だけ土産物買ってるよー。
とか思ってると上司が一言。
「ごめんなさい、電話が長引きまして。」
え゛ーどう見ても手に土産物持ってるくせに、明らかにガスト以外の店に入って商品を購入した形跡ありありな癖に小学生でもバレるような言い訳してるよこの人ー。
とか思いながらリーマンな僕は「あ、そうなんですか」。
「じゃあ、行こうか。」
え゛ーこの人自分からガストに誘っておいて結局何も頼まないんかいー。
とか思いながらリーマンな僕は「はい、わかりました」。
とまぁ、上の一連の動きを見ていただいただけで僕の上司の行動が予測不能なのはわかるかとは思うんですが。
一番の衝撃はこの後にやって来ました。
この上司の方、昔からずっと出張出張ばかりの部署でやってますので地方のおいしい物を食べるのが趣味でして。
どの地方にはどんな名産があるとか、何が名物であるとか全部頭の中に入っているような人なんですよ。
ですんで、まぁ上の一連の行動は理解できるかな、と。
この上司はうちの部をまとめる存在の方なんで同じ部の人間からも、上の幹部の方からもよく電話がかかってくるんですね。
ですから、ガストに入ったら電話がかかってきて、外で話をしていたらたまたま土産物屋さんが目に入って。
そこに置かれてある佐賀の名産品(何かわからんけど)に目を奪われ。
思わず土産物屋さんに入ってしまい。思わず買ってしまったと。
きっとそんなことがあったんだなと。
で、電話していた時間と土産を買っていた時間を比較すると明らかに電話の時間の方が多いと。
だから色々省略して「電話が長引きまして」との発言になったのだと。
そう、僕は解釈したわけですよ。
乗り継ぎの電車には無事乗ることが出来ました。
電車がホームを出ました。
上司はおもむろに袋を開けて、土産物を取り出しました。
九州は佐賀県、もっと限定すると伊万里ですわ、焼き物で有名な伊万里ですわ、そこから有田を経由して佐世保へと向かう電車の中。
上司はおもむろに袋を開けて、土産物を取り出しました。
伊万里の名産の食べ物って何だろー、と興味津々に土産物に顔を向ける僕。
そう、本当の衝撃はこの瞬間だったのです。
その時、目に飛び込んできたものは。
「越前名物 ○○おかき」
失神しそうになりました。
何で北越地方の名産品やねん。
何で福井県とかそこらへんの銘菓やねん。
何でやねん。
何でやねん。
何で、やねん。
あまりに理解不能な状況に直面し、薄れゆく記憶の中僕のあまりの驚愕の顔に気付いたのか、ボソッと上司はつぶやいているのが耳に入りました。
「ガストのトイレがあまりに汚かったから(←潔癖症なもんで)、向いのおかき屋さんのトイレ借りて、そのまま帰るのも悪かったんで仕方なく買ったねん。」
ピコーン!それを聞いた僕はやっと一連の行動に納得が言ったのです、点と点が結ばれて一本の線になった感覚。
僕「あーだからなんですね!越前とかって福井とかあそこあたりでしょ!いやぁ何で越前のおかきなんかなって思ってたん・・・」
上司「あれ、製造元、熊本県ってなってる。」
完璧に失神しました。
偽造ですやん。
犯罪ですやん。
国産牛肉って書いたオージービーフみたいなもんですやん。
とか思いながら静かに僕は気を失いました。
その後十数分ほど、ボリボリというおかきをかじる音だけが電車の中に響き渡っておりましたとさ(←僕が失神して気を失っている間)。
P.S.
その後、無事何とか佐世保に着いたわけなんですが。
佐世保に着いた時の上司の第一声が。
「あのおかき不味かったぁ!!」
当たり前や!!